ストーマの観察項目は?トラブルを防ぐストーマケアの基本

ストーマの観察項目は? トラブルを防ぐストーマケアの基本

造設したストーマ(人工肛門/人口膀胱)のケアを適切に行うには、ストーマや周囲の皮膚の状態、便の性状などを日々確認することが大切です。ストーマの状態を把握していれば、装具交換の目安にしたり、トラブルの早期発見につなげたりできます。
ここでは、日々のストーマケアに役立つ、ストーマの観察項目や観察時のポイントなどをご紹介します。

ストーマの観察項目

ストーマの観察項目

ストーマや周囲の皮膚、排泄物の性状を日々確認することは、トラブルの早期発見につながります。特に、装具交換時はストーマとその周辺を直視できる数少ないタイミングです。しっかりと状態を確認して、トラブルの予防に役立てましょう。
ストーマの主な観察項目としては、以下の点が挙げられます。

1. ストーマの色や形

ストーマの見た目は、人によって大きく異なります。体形の変化などによって見た目が変わることもあるため、定期的に確認が必要です。

安定したストーマは、鮮やかな赤色かピンク色をしています。手術直後は赤黒くむくんでいたとしても、時間の経過とともに色・形状ともに落ち着くことが一般的です。
手術から時間が経っても黒ずんだ色をしている、腐敗臭がするといった時は、ストーマが壊死している恐れがあります。

形や高さは、円形・楕円形・高さがあるもの・皮膚より低いものなど、個人差が大きいです。座っている時と立っている時など、体勢も見た目に影響を与えます。
排泄物の漏れや皮膚トラブルなどを防ぐには、正しいストーマ装具を選定し、自身のストーマと腹壁の形状を定期的に確認することが大切です。

2.面板の形状

ストーマ装具を交換する時は、外した面板(皮膚保護剤)がどれくらい溶解または膨潤しているか、排泄物が付着していないかを確認することも大切です。面板の状態から、ストーマ装具の交換に適したタイミングを推測できます。
例えば、面板が普段よりも溶解または膨潤している時は、交換のタイミングを1日早くすると良いでしょう。

面板の溶解や膨潤が均等ではない、排泄物の漏れが見られる場合は、体形の変化などに伴い、ストーマ装具が合わなくなっている可能性があります。そのまま使用を続けると、においや皮膚トラブルなどの原因になるため注意が必要です。
医師に相談したうえで、ストーマ装具の変更やアクセサリーの使用を検討することをおすすめします。

3.皮膚のトラブルの有無

ストーマ造設後に多いのが、ストーマ周囲の皮膚トラブルです。ストーマ周囲の皮膚が健康に保たれている時は、腹部の他の皮膚と同じように見えますが、炎症やアレルギーを起こすと変色したり、出血やかゆみ、痛みなどの症状が現れたりすることもあります。
ストーマ装具の装着が難しくなる点も見逃せません。

ストーマ周囲の皮膚トラブルの具体例としては、湿疹や赤み、びらんなどが挙げられます。排泄物の付着や皮膚保護剤による化学的な刺激、面板を無理に剥がしたことによる皮膚の損傷など、皮膚トラブルが起こる原因はさまざまです。
ストーマ装具を交換する時は、ストーマ周囲の皮膚のどのあたりに、どのようなトラブルが発生しているのかを観察し、原因を把握・対処しましょう。

4.排泄物の性状

排泄物の性状も、日々確認しておきましょう。ストーマ装具交換時だけでなく、排泄物を捨てる際にも確認できます。

【便の性状】
便の性状や量は、消化管ストーマが造設された腸管の部位によって異なります。消化管ストーマの種類による便の性状の違いは以下のとおりです。

・上行結腸ストーマ:ストーマの位置はお腹の右側。便は水様~泥状
・横行結腸ストーマ:ストーマの位置はお腹の中央。便は泥状~軟便
・S状、下行結腸ストーマ:ストーマの位置はお腹の左側。便は軟便~固形
・回腸ストーマ:ストーマの位置はお腹の右側。便の性状は水様

便の性状は、食べ物によって緩くなったり、硬くなったりすることがあります。体調不良や食べ物の影響で下痢を起こしている時は、面板の溶解または膨潤が早くなる恐れがあるため、状態を記録しておくことが大切です。

【尿の性状】
正常な尿は淡い黄色または透明で、無臭に近いです。量は成人で1日1,200~1,500ml程度とされています。
ただし、尿の色やにおいは水分の摂取量や食事内容、薬剤の内服などで変化するため、健康だからといって必ず無色無臭の尿が出るわけではありません。

便も尿も、人によって状態は違います。体調が良い時の排泄物の性状を観察の目安にし、普段と異なる点がある時は医師に相談しましょう。

観察項目と一緒に覚えておきたいストーマケアの種類

観察項目と一緒に覚えておきたいストーマケアの種類

ストーマやストーマ周囲の皮膚の状態を正常に保つには、正しい方法でケアすることが大切です。ストーマ装具を交換する手順やコツも覚えておきましょう。
基本的なストーマケアの手順は、以下のとおりです。

【ストーマ装具交換の手順】
1.上側から下側に向かって、皮膚を軽く押さえながら面板を剥がす
2.消化管ストーマはお腹の外側からストーマ側に、尿路ストーマはストーマ側から外側に向けて、ストーマ周囲の皮膚を洗う
3.洗浄剤や石けんを洗い流したら、タオルで押さえるようにして水分を優しく拭き取る
4.(フリーカットの場合)ストーマの大きさを測定し、面板のカットする部分をフィルムにマーキングする
5.(フリーカットの場合)面板にフィルムを当て、マーキングした部分でカットする
6.面板の剥離紙を剥がし、ストーマの下側から上に向かって貼り付ける

ストーマ装具交換の手順やコツの詳細は、以下のページも併せてご確認ください。

ストーマ装具の交換方法。知っておきたいセルフケアのコツ
⇒https://www.kuribarastore.com/shop/pg/1stoma1/

ストーマで注意が必要な合併症

ストーマで注意が必要な合併症

ストーマの合併症は、造設手術直後から起こる早期合併症と、退院後に発生する晩期合併症の2種類に大きく分けられます。
退院後に見られる早期合併症には、ストーマ脱出や陥没ストーマ、ストーマ狭窄、ストーア傍ヘルニアなどがあります。それぞれの症状は、以下のとおりです。

【ストーマ脱出】
腹部に圧力がかかり、ストーマが普段よりも大きく飛び出した状態です。面板でストーマが傷ついたり、腸管の壊死につながったりする恐れがあります。

【陥没ストーマ】
ストーマが皮膚よりも低い位置にある状態を指します。排泄物が面板の下に入りやすく、漏れや排泄物による皮膚トラブルを起こしやすいため注意が必要です。

【ストーマ狭窄】
何らかの理由でストーマ口が狭くなった状態です。排泄物が排出されなくなることもあります。

【ストーマ傍ヘルニア】
ストーマ周囲の腹壁が膨らんだ状態です。ストーマ装具の装着が難しくなり、排泄物の漏れによるトラブルにつながりやすくなります。

ストーマや周囲にトラブルが起こると、ストーマケアが難しくなることもあります。常にストーマの状態を確認し、トラブルが発生している時はすぐに医師や看護師に相談しましょう。
ストーマの合併症に関する詳細は、以下の記事もご確認ください。

⇒ストーマが飛び出る原因は? 覚えておきたいよくあるトラブルと対処法

定期的な観察がトラブル予防のコツ

定期的な観察がトラブル予防のコツ

ストーマ装具は、長時間皮膚に付け続けるものです。面板に含まれる成分や排泄物、汗などが原因で、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
トラブルを予防するには、ストーマや周囲の皮膚、排泄物などの状態を日々観察・記録することが大切です。健康な状態を把握していれば、トラブルが起こった時にすぐ対処できるようになります。
ご紹介した観察項目を、日々のストーマケアにお役立てください。