訪問看護でも必須! ストーマケアの方法と注意点

訪問看護でも必須! ストーマケアの方法と注意点

少子高齢化の進行やストーマ保有者(オストメイト)の増加などを背景に、日本では訪問看護や家族によるストーマケアのニーズが高まりつつあります。適切なストーマケアを行うためには、正しい知識が欠かせません。
ここでは、オストメイトの方が快適に日常生活を送るために役立つ、ストーマケアの方法や注意点をご紹介します。

ストーマとは

ストーマとは

ストーマとは、手術によって腹部につくられた、便や尿を体外に排泄するための排泄口(人工肛門/人工膀胱)のことです。
便を排泄する消化管ストーマと、尿を排泄する尿路ストーマ(ウロストミー)に分けられ、ストーマを造設した人はオストメイトと呼ばれます。さらに、消化管ストーマは造設に使用する腸の部位から、回腸ストーマ(イレオストミー)と結腸ストーマ(コロストミー)に分類されます。

いずれのストーマも、排泄物をためたり、尿意を感じたりする働きがありません。自分の意思で排泄できなくなるため、ストーマ袋(パウチ)を腹部に取り付け、排泄物を適切に管理する必要があります。

ストーマケアの方法とポイント

ストーマケアの方法とポイント

ストーマを造設した後は、排泄物やストーマ装具の管理が必要になります。ストーマ造設直後は病院の看護師がケアを行いますが、以前と同様の日常生活を送るためには、ストーマケアを自分で行えるようになることが大切です。

一方で、退院までにストーマケアを完璧にできるようになるとは限りません。オストメイトの状態によっては、家族や訪問看護師の方がケアを行う可能性もあります。
ストーマケアで行うことや注意点を、オストメイトに接する機会がある方は覚えておきましょう。

1. 排泄物の管理

前述のとおり、ストーマを造設した後は、便や尿を自分の意思で排泄することはできません。排泄物はストーマ袋(パウチ)で受け止め、袋内にたまった排泄物を定期的に処理する必要があります。

便や尿がたまったら、ストーマ袋の下部にある閉鎖具(栓やクリップなど)を開けて、袋内にたまった排泄物を定期的にトイレに流すようにします。 頻度は個人差がありますが、袋内に排泄物が3分の1ほどたまった時が、処理を行う目安です。就寝前や外出前など、トイレに長時間行けない時にはストーマ袋を空にしておくと良いでしょう。

処理をした後、排出口や袋の表面に排泄物が付着したままだと、においの原因になります。袋に排泄物が付着しないように処理をしたり、排出口をトイレットペーパーなどでしっかり拭き取ったりすることも大切です。

2.ストーマ装具の交換

ストーマ装具は、排泄物をためるストーマ袋と、排泄物の刺激から皮膚を守る役割を持つ面板から構成されています。

ストーマ装具は、ストーマ周囲の状態や生活習慣に合わせて、ストーマ袋と面板が一体のワンピース装具(単品系装具)と、別々になっているツーピース装具(二品系装具)の2種類から選ぶことが可能です。

いずれのストーマ装具も使い捨てで、洗って再利用することはできません。汚れたり、剥がれたりしていなくても、定期的に新しいものに交換する必要があります。ストーマ装具を交換する大まかな手順は、以下のとおりです。

【ストーマ装具の交換方法】
1.新しいストーマ装具やガーゼなど、必要なものを用意する
2.排泄物を捨てる
3.ストーマ装具の面板をゆっくり剥がす
3.ストーマ周囲を洗浄し、水滴が残らないように丁寧に拭き取る
4.新しいストーマ装具を貼り付ける

ストーマ装具の交換頻度は、使用している装具や汗の量などによって異なります。排泄物の漏れや皮膚障害といったトラブルを防ぐために、適切な頻度で交換するようにしましょう。
交換期間の目安は各メーカーが記載しているので、事前に確認しておくと安心です。

3.皮膚トラブルの対応

ストーマ周囲の皮膚は排泄物に触れたり、面板に触れ続けたりするため、かぶれや感染症などのトラブルが起こることも考えられます。トラブルが起きた時は、皮膚の状態を観察したうえで、原因を推測したり、トラブルに対処したりすることが大切です。

トラブルの予兆を見逃さないように、ストーマの色やツヤ、皮膚の状態などを日々観察しておきましょう。トラブルが起きた時は、どこで起きたのか、いつから発症しているかなどを観察して、対策を検討してください。

また、体調によって便の性状や尿の色が変わることもあります。排泄物の性状の記録も取っておくと安心です。

4.食生活の管理

消化管ストーマは、食生活によって便の状態が緩くなったり、硬くなったりすることがあります。
バランスの取れた食事を摂り、暴飲暴食は控えるようにしましょう。食事内容を記録しておき、下痢や便秘を引き起こした食材は控えることをおすすめします。
回腸ストーマ(イレオストミー)の方は、玄米やパイナップルといった消化が悪く便が詰まりやすいものを多量に摂取すると、気分が悪くなることもあるため注意が必要です。

その他にも、排泄物のにおいが強くなる食材や、ガスを発生させやすい食材もあります。排泄物のにおいやガスの発生が気になる方は、食生活を見直してみましょう。

また、排泄物の量を抑えようとして、水分摂取を控えるのは厳禁です。感染症や脱水症状になる恐れがあるため、十分な水分補給を行うことを心がけてください。

ストーマで起こりやすいトラブルの例

ストーマで起こりやすいトラブルの例

【ヘルニア・ストーマ脱出】
加齢や咳などが原因で、腸が飛び出てしまうトラブルです。腹痛などの症状がなく、すぐに元に戻せるのであれば緊急性は高くありませんが、医師に相談して適切な対処を行ってもらいましょう。

【排泄物の漏れ】
ストーマ袋から排泄物が漏れてしまうこともあります。体形の変化や、排泄物の性状の変化に合わせて、適切なストーマ装具を使用することが大切です。
ストーマ周囲の皮膚に皺やくぼみがある時は、装具を見直してみましょう。

【感染症】
ストーマ装具によるかぶれなどが影響で、感染症に陥る恐れもあります。定期的にストーマ周囲の皮膚を洗浄して、清潔な状態を保つことが重要です。

ストーマケアの知識を備えておこう

ストーマケアの知識を備えておこう

ストーマを造設しても、ストーマ装具を適切に使用すれば、日常生活における制限はほとんどありません。運動や旅行を楽しむことも可能です。オストメイトの方は、ストーマケアのやり方や注意点を覚えておきましょう。

ただし、患者の状態によっては、自分でストーマケアを行うのが困難なことも考えられます。訪問看護に携わる方や家族など、オストメイトと関わる周囲の人たちもストーマに関する知識を備えておくことが大切です。