ストーマ装具のガス抜き方法。ガスがたまるのを防ぐにはどうする?

ストーマ装具のガス抜き方法。ガスがたまるのを防ぐにはどうする?

ストーマ(人工肛門)には括約筋がないため、排便を自らの意志でコントロールすることができません。そのため、ストーマ装具をお腹に貼り付け、排泄物を受け止める必要があります。
この時、人体はガス(おなら)も排出しているため、ストーマ袋内にガスがたまってしまうことがあります。ストーマ袋内のガスは、どのように対処すれば良いのでしょうか。
  ここでは、ストーマ装具にたまったガスを抜く方法や、ガスを出にくくする工夫をご紹介します。

ストーマ装具内にガスがたまる原因は?

ストーマ装具内にガスがたまる原因は?

ストーマ装具内にガスがたまり、ストーマ袋(パウチ)が膨らむ現象は「バルーニング」と呼ばれます。
消化管ストーマ向けのストーマ装具の袋には、脱臭フィルターが付いているものと付いていないものがあります。脱臭フィルターが付いているものでは、袋内のガスは脱臭されながらフィルターから自然と抜けていくようになっているのが特徴です。

しかし、何らかの原因でガスが抜けなくなると、袋内にガスが充満してしまいます。
原因の例としては、普段以上にガスが出てフィルターの処理機能を超えたことや、フィルターに排泄物が付着して目詰まりを起こしたことなどが挙げられます。

日中であれば、ストーマ袋の上部に付いているフィルターに排泄物が付着する可能性は低いです。一方で、就寝中はストーマが横向きになるため、排泄物がフィルター部分に付着する可能性が高くなってしまいます。
水様便が出る方は排泄物がフィルターに付着する可能性が高いため、水様便をゲル化する凝固剤の活用をおすすめします。

バルーニング現象によって袋が破けることはありませんが、たまったガスの圧力で面板や皮膚保護剤が剥がれてしまう恐れがあるため注意が必要です。

ストーマ装具のガス抜きを行う方法

ストーマ装具のガス抜きを行う方法

ストーマ袋がガスの影響で膨らんでいる時は、何らかの方法でガスを抜く必要があります。
ストーマ袋にたまったガスを抜く方法を、2つご紹介します。

1. 袋を少し押さえる

フィルターが目詰まりせずに機能している時は、少しストーマ袋を押さえてみてください。ストーマ袋に軽く力を加えることで、フィルターからガスが抜けていく効果が促進されます。すぐトイレに行けない時などに有効です。
この時、無理に力を加えすぎると、お腹に負荷がかかる恐れがあります。優しく力を加えることを心がけましょう。

ストーマ袋に力をかけてもガスが抜けないという時は、脱臭フィルターが目詰まりを起こしている可能性があります。フィルターから自然にガス抜きされず、バルーニングのリスクが高いため注意が必要です。
そのような方は、次の方法でガス抜きを試してみましょう。

2.排泄口からガスを抜く

バルーニングを起こした時の一般的な対処方法は、ストーマ袋の排泄口を少し開けてガスを抜くことです。ストーマ袋と面板が別々になっている「ツーピース装具(二品系装具)」を使用している方は、ストーマ袋と面板の嵌合部を少し外してガスを抜くことも可能です。

ただし、この方法は脱臭フィルターを経由せずにガスが排出されます。においが気になる可能性もあるため、トイレなどの人目が気になりにくい場所で行うと良いでしょう。

また、別売りの後付けフィルターによって、ガスの排出を増やす方法も有効です。ガスの排出量を増やすことで、バルーニングが起こるリスクを軽減できます。

3.頻繁に装具を取り換える

頻繁にストーマ装具を新しいものに交換するのも有効です。1日1回など、定期的にストーマ装具を交換すれば、フィルターのガスを抜く効果を維持したり、目詰まりを防いだりすることができます。

ワンピース装具(単品系装具)を使用している方は、医師や看護師などに相談して、ツーピース装具に変えてみるのも良いでしょう。 ストーマ袋だけを定期的に交換しやすくなるので、フィルターが目詰まりを起こすリスクを軽減できます。

ガスがたまるのを防ぐ方法

ガスがたまるのを防ぐ方法

ガスがたまった時の対処法だけでなくガスを抑える方法も知っておきましょう。ガスの発生量自体を抑えれば、ガス抜きを行う頻度やバルーニングのリスクを減らすことができます。

1. 食事の方法に気を付ける

ストーマ袋内にたまるガスの主な原因は、食事の時に飲食物と一緒に飲み込んだ空気です。すするように食べる、ストローを使う、会話をしながら食事をする、早食いするなど、空気を吸い込みやすい行動を控えると、ガスの発生量を減らせます。 ガスの発生が気になる方は、口をつぐんでゆっくりと食べることを心がけましょう。

2.食事内容を見直す

食事内容そのものを見直すことも大切です。腸内細菌のエサとなる食物繊維が豊富に含まれた食べ物や辛い物は、ガスが発生しやすいとされています。
ビールや炭酸飲料のような飲み物も、ガスが発生する原因になります。飲むのをやめる必要はありませんが、ガスが気になる・バルーニングが頻繁に起こるといった時は控えた方が良いでしょう。

具体的には、以下の食べ物はガスを出しやすいとされています。

イモ類、豆類、緑黄色野菜、ラーメン、貝、えび、辛いもの、ビール、炭酸飲料、チューンガム など

反対に、乳酸菌飲料やヨーグルトは、ガスの発生を抑える効果が期待できます。パセリやレモンなど、においを抑える働きがある食材を食べるのもおすすめです。

また、バルーニングを防ぐために、何を食べたか毎日記録しておきましょう。日頃から食べた食材を記録しておけば、何を食べた日にバルーニングが起こったのかを特定・対策しやすくなります。

ストーマ装具内のガスが抜けすぎてしまう時の対処法

ストーマ装具内のガスが抜けすぎてしまう時の対処法

バルーニングとは逆に、ストーマ装具のフィルターが機能しすぎて袋の内部が真空状態になることもあります。パンケーキングと呼ばれる現象で、主にガスの発生量が少ない方に起こりやすいです。

パンケーキングが起こると、排泄物が下に落ちにくくなり、袋の上にとどまってしまいます。排泄のしにくさにつながるだけでなく、面板からの排泄物の漏れや皮膚トラブルなどにつながる恐れがあるため、注意が必要です。

パンケーキングが見られる時は、フィルターに付属のシールやテープを貼ってふさいでおきましょう。フィルターの機能を弱めることで、ストーマ袋内の空気が抜けすぎるのを防げます。
装着前にストーマ袋内に空気を入れておく方法も有効です。フィルター部分にシールを取り付け、剥離紙を外してからストーマ袋内に空気を吹き込むことで、真空状態になるのを防ぎやすくなります。

また、消臭潤滑剤を活用するのもおすすめです。潤滑剤の作用で排泄物がストーマ袋の下に落ちやすくなります。

ガス抜きや食事の見直しでバルーニングに対処しよう

ガス抜きや食事の見直しでバルーニングに対処しよう

消化管ストーマ用のストーマ装具を使用しているオストメイトの方にとって、ガスに関する問題は大きな悩みになり得ます。

近年のストーマ袋に採用されているフィルターは、脱臭・ガス抜き性能に優れていますが、フィルターが機能しない、目詰まりを起こしたというトラブルを完璧に防ぐことはできません。時には自分自身でガス抜きをすることもあるため、正しい対処方法を知っておくことが大切です。

また、ガスの発生は自然現象なので、ガスの量を抑えることはできても、完全にガスをなくすことは不可能です。食事の内容や食べ方に気を配る、使用するストーマ装具を変えてみるなど、自身の体調に合わせて、無理のない範囲で対策を行いましょう。