ストーマとは? 快適に暮らすために知っておきたい日常生活のポイント

ストーマとは? 快適に暮らすために知っておきたい日常生活のポイント

自分や同居している家族が「ストーマ」を造設することになったものの、どのようなものかわからないという方は多いのではないでしょうか。
ストーマに関する不安を抱えている方は、ストーマとは何かを理解することが大切です。しっかりと正しい知識を身につければ、不安や疑問を解消できます。
ここでは、ストーマの概要や種類、日常生活におけるポイントなどをご紹介します。

ストーマとは

ストーマとは

ストーマ(Stoma)とは、ギリシャ語で「口」という意味を持つ言葉です。医療の現場では、腸や尿管の一部をお腹の外に出してつくられた、便や尿の排泄口(人工肛門・人工膀胱)のことを指します。ストーマを設けた人たちを「オストメイト」と呼びます。

ストーマは粘膜でできているため赤色をしていて、粘液で常に湿っているのが特徴です。神経がないので、痛みを感じることはありません。
括約筋もないため、便意や尿意を感じたり、自分の意志で排泄をコントロールしたりすることは不可能です。そのため、ストーマ装具と呼ばれる器具をお腹に貼り付け、排泄物を受け止める必要があります。

ストーマの種類

ストーマの種類

ストーマは、便を排泄する消化管ストーマ(コロストミー/イレオストミー)と、尿を排泄する尿路ストーマ(ウロストミー)に大きく分けられます。
消化管ストーマは造設する位置から、結腸につくられる結腸ストーマ(コロストミー)と、回腸につくられる回腸ストーマ(イレオストミー)にさらに分けられます。
それぞれの概要は、以下のとおりです。

1. 結腸ストーマ(コロストミー)

結腸(大腸の一部)をお腹の外に出すことで造設したストーマが「結腸ストーマ(コロストミー)」です。ストーマをつくる位置によって、以下のように便の性状が異なります。

・上行結腸ストーマ:ストーマの位置はお腹の右側。便は水様~泥状
・横行結腸ストーマ:ストーマの位置はお腹の中央。便は泥状~軟便
・S状、下行結腸ストーマ:ストーマの位置はお腹の左。便は軟便~固形

また、手術の目的から、永久的なストーマと、後にストーマを閉鎖する一時的ストーマに分けることもできます。

2.回腸ストーマ(イレオストミー)

回腸(小腸の一部)をお腹の外に出して造設したストーマが回腸ストーマ(イレオストミー)です。お腹の右側につくられるのが一般的で、水様性の便を排泄します。

結腸ストーマと同様に、手術の目的から永久的なストーマと、後に閉じる一時的なストーマに分けることが可能です。

3.尿路ストーマ(ウロストミー)

尿を排泄するストーマで、ウロストミーと呼ばれます。尿路変更術の種類から、ストーマのつくられる位置や大きさは、以下のように異なります。

【回腸導管】
回腸の一部を使って造設した尿路ストーマです。尿だけでなく、腸の粘液も一緒に排出されることがあります。

【尿管皮膚瘻(にょうかんひふろう)】
尿管を直接お腹の外に出して、尿を排泄する尿路ストーマです。2本の尿管をまとめてお腹の外に出す「一側性」と、2本をお腹の左右から出す「両側性」に分けることができます。
カテーテルが入ることもあります。

【腎瘻(じんろう)】
カテーテルを直接腎盂(じんう:腎臓内の尿がたまる場所)に挿入することで、持続的に尿の排泄を行います。

【膀胱瘻(ぼうこうろう)】
カテーテルを恥骨上部から膀胱内に挿入することで、尿の排泄を行います。

ストーマから出てくる排泄物はどう管理する?

ストーマから出てくる排泄物はどう管理する?

面板は、皮膚に排泄物が直接つかないようにしたり、排泄物の水分を吸収したりする作用を持つパーツです。
また、ストーマ装具は、面板とパウチが一体の単品系(ワンピース)装具と、別々になっている二品系(ツーピース)装具に分けることができます。それぞれ特徴が異なるので、用途に適したストーマ装具を選ぶことが大切です。

ストーマ装具の交換方法

ストーマ装具の交換方法

皮膚をきれいに保つために、ストーマ装具は定期的に交換する必要があります。排泄の少ない起床直後や食事前に交換を行うのが基本です。
ストーマ装具の面板は、温めることで粘着力が強くなります。剥がしにくいことがあるので、入浴直後の交換は避けるのがポイントです。
落ち着いて交換できるように、事前に必要なものをそろえておきましょう。

また、ストーマは粘膜でできているので傷つきやすく、出血もしやすいです。やさしくケアすることを心がけてください。
万が一、出血が止まらない、ストーマが大きく飛び出しているなどのトラブルがある時は、医師に相談しましょう。

日常生活に変化はある?

日常生活に変化はある?

ストーマを造設した後も、ストーマ装具を身につけて適切に管理を行えば、基本的にはこれまでと同じ生活を送ることができます。ただし、食事や運動などが気になる方もいらっしゃるでしょう。
日常生活におけるポイントは、以下のとおりです。

1. 食事のポイント

ストーマを造設したからといって、特別な食事を摂る必要はありません。バランスの良い食事を、1日3食規則正しく食べましょう。
回腸ストーマの方は、消化の悪い食べ物を一度にたくさん摂取するのは避けてください。消化の悪いものは細かく切ったり、よく噛んで食べたりすることが大切です。
尿路ストーマの方は、尿路感染や尿結晶、臭いの予防のために、十分な量の水分を摂取することを心がけましょう。

2.運動のポイント(イレオストミー)

術後の体力の回復に合わせて、運動・スポーツを行うことも可能です。
ただし、ストーマを圧迫したり、腹部に力が加わったりするスポーツは避けた方が良いでしょう。事前にストーマ袋の中は空にして、予備の装具も用意しておくと安心です。
オストメイトの方向けの術後専用エクササイズプログラムもあります。医師に相談のうえで、できる範囲から運動を行ってみてはいかがでしょうか。

運動以外にも、旅行を楽しんだり、仕事や学校に復帰したりすることも、もちろん問題ありません。

3.入浴のポイント

自宅の場合は、ストーマ装具はつけたままでも、外した状態でも入浴することができます。カテーテルが入っている方などは、装具をつけたまま入浴してください。
入浴前にストーマ袋の中は空にしておき、排泄の少ない時間帯に入浴すると安心です。

一方で、公衆浴場では必ず装具をつけたまま入浴するのがマナーです。早朝や深夜など、比較的人が少ない時間帯を選んで入浴するのも良いでしょう。
また、脱衣所や洗い場などでストーマ装具を脱着したり、洗浄したりするのは厳禁です。

2.服装のポイント(イレオストミー)

ストーマをきつく圧迫しない服装であれば、おしゃれを楽しむこともできます。ベルトが当たる位置にストーマを造設した方は、サスペンダーを利用しましょう。 また、オストメイト用につくられた、ストーマ装具をポケットにしまうことができる下着や、腹帯を着用するのもおすすめです。

ストーマの基本を理解しておこう

ストーマの基本を理解しておこう

ストーマを造設すると、手術前のように排泄を自分で調整することができなくなります。
ただし、知識や経験を備えておけば、手術前と同じように生活を送ることは可能です。食事やスポーツを楽しんだり、旅行に行ったりすることもできます。
ご紹介した知識を、ストーマ造設後の生活にお役立てください。