オストメイトを支援するサービスや補助金には何がある? 覚えておきたい社会福祉制度

オストメイトを支援するサービスや補助金には何がある? 覚えておきたい社会福祉制度

オストメイトの方々にとって、ストーマ装具は日常生活を送るうえで欠かせないものです。ストーマ造設後は生涯必要になるものなので、経済的な負担も大きくなります。
それらの負担を軽減するために、オストメイトの方々は、ストーマ装具の支給や運賃の割引など、各種社会制度を受けることが可能です。
ここでは、オストメイトの方々を支援する社会福祉サービスや補助金といった制度についてご紹介します。

オストメイトとは

オストメイトとは

オストメイトとは、さまざまな病気や事故により、お腹に便や尿を排泄するためのストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設した人のことです。
ストーマには括約筋がないので排泄をコントロールできませんが、ストーマ装具を取り付けて排泄物を受け止めることで、手術前と同じように日常生活を過ごせます。

ただし、ストーマ造設は内部障害の一種です。服を着ると外見ではわかりにくく、誤解を受けることも考えられます。

オストメイトの方々が受けられる社会福祉制度

オストメイトの方々が受けられる社会福祉制度

オストメイトの方々は、各種社会福祉サービスを受けることができます。具体的には、以下の3つのサービスを受けることが可能です。

【身体障害者手帳の交付】
身体障害者福祉法に基づく障害等級に該当する方は、身体障害者手帳を取得できます。鉄道やバスといった交通運賃の割引や、税金の免除または減額、一部施設の入場料の割引、日常生活用具(ストーマ装具)の給付といった経済的支援を受けることが可能です。

【障害年金の支給】
加入している年金の種類や状況に左右されますが、障害年金の支給を受けることも可能です。

【医療費控除】
ストーマ装具を自己負担で購入した費用が年間10万円を超えるものについては、医療費控除の対象となります。

このように、障害の程度やお住まいの市区町村によって詳細は異なりますが、さまざまな福祉サービスを受けることが可能です。

各種手続きの申請から取得・支給までの流れ

各種手続きの申請から取得・支給までの流れ

各種福祉制度は、ストーマを造設して自動的に受けられるものではありません。サービスを受けるには、さまざまな手続きを行う必要があります。
具体的な申請方法は、市区町村などによって異なる場合があります。詳細については、福祉事務所や社会保険事務所、税務署など、管轄の窓口にお問い合わせください。

一般的な申請の方法は、以下のとおりです。

1. 身体障害者手帳の申請方法

身体障害者福祉法の障害等級に該当する場合、オストメイトの方は身体障害者手帳を取得することが可能です。対象は永久ストーマの方で、ストーマのタイプに関わらず造設後すぐに申請できます。

一時的ストーマの方は、原則として申請できません。ただし、身体障害者手帳は取得対象外ですが、県・市区町村によっては一時ストーマの方向けに支給制度を実施していることもあります。

【申請・交付手順】
1.住んでいる市区町村の役所(障害福祉課)や身体障害者福祉事務所に行き、「身体障害者手帳交付申請書」と「身体障害者診断書」をもらう
2.診断書を作成できる指定医の名前と、その医師がいる病院を確認する
3.病院に行き、指定医に身体障害者診断書を作成してもらう
4.住んでいる市区町村の福祉事務所に、記入済みの身体障害者手帳交付申請書、指定医が作成した診断書、写真(タテ4cm×ヨコ3cm)を提出する。※市区町村によってはマイナンバーカードが必要
5.認定審査後、身体障害者手帳が交付される

手帳の交付までには、申請から1~2カ月程度かかります。手帳を受け取る際に、自分が受けられるサービスを確認しておきましょう。

2.日常生活用具の申請方法

身体障害者手帳の交付を受けたオストメイトの方は、日常生活用具(ストーマ装具)の給付を受けることも可能です。一般的な申請の流れは、以下のようになります。

【申請手続きの方法】
1.福祉事務所でストーマ用具の販売代理店を紹介してもらう
2.販売代理店に連絡し、ストーマ用具代の見積書を発行してもらう
3.福祉事務所に給付申請に必要な書類や見積書などを提出し、給付券の発行手続きを行う
4.販売代理店でストーマ用具と給付券を引き換える

ただし、自治体によっては申請窓口から直接業者に見積もりを依頼する場合もあるなど、申請方法や給付方法は異なります。給付対象のストーマ用具も自治体ごとに違いがあるため、詳細についてはお住まいの市区町村の福祉事務所にお問い合わせください。

3.障害年金の申請方法

障害の程度など、一定の条件を満たしていて年金に加入している方は、障害年金を受けられる可能性があります。

永久的なストーマを造設した方の多くは3級に該当します。「障害の原因になった傷病の初診日に厚生年金の被保険者である」などの条件を満たしている場合は、障害厚生年金を受給することが可能です。
消化管ストーマと尿路ストーマの両方を造設した、その他にも障害を抱えているといった方は、1級や2級に該当することもあります。

ただし、障害年金を受給するには、「加入期間のうち保険料納付済みと免除期間が全期間の3分の2以上ある」「初診日前から1年間に未納期間がない」といった要件もあります。
詳細については、国民年金の方は市区町村の国民年金課、厚生年金の方は年金事務所または年金相談センター、共済年金の方は共済組合にお問い合わせください。

4.医療費控除の申請方法

自費で購入したストーマ装具の費用は、医療費控除の対象となる場合があります。医療費控除とは、自分または家族のために医療費を支払った時に受けられる控除のことです。

具体的には、年間で10万円以上の医療費を支払った方は、確定申告時に申告すると税金の一部が戻ってきます。ストーマ装具代だけでなく、その他の医療費との総額で10万円を超えた時も、医療費控除の対象です。

確定申告の際は、医師が発行した「ストーマ用装具使用証明書」と、ストーマ装具代の明細書が必要になります。
詳細については、税務署にお問い合わせください。

オストメイト対応トイレには補助金を使える?

オストメイト対応トイレには補助金を使える?

オストメイトの方が、排泄物の処理やストーマ装具の交換・装着などを行えるように整備されているトイレは、オストメイト対応トイレと呼ばれます。

一般的には駅や病院などの公共施設で見られるものですが、一般家庭用のトイレをオストメイト対応トイレにリフォームすることも可能です。
座ったままでもストーマ袋を処理できるように前が広い便座に交換する、トイレにストーマ袋を洗浄するための背もたれを設置する、といった方法が例として挙げられます。

オストメイト対応のトイレに対して一律の補助金はありませんが、各自治体が独自に制度を設けていることもあります。気になる方は確認しておくと良いでしょう。
また、公共施設のオストメイト対応トイレについても、整備・改修工事に要する費用は、自治体から補助金が出る場合があります。

福祉サービスを活用しよう

福祉サービスを活用しよう

ストーマの造設は、ストーマ装具の購入や通院など、術後もさまざまな費用がかかるものです。オストメイトの方は経済的な負担を軽減するために、各種福祉サービスを活用することをおすすめします。

ただし、各自治体や障害の程度などによって、手続きの流れや必要な書類、受給できるサービスなどは異なります。
書類を再提出したり、不備によってサービスを受けられなかったりする可能性も捨てきれません。事前に、担当窓口で情報を確認しておくことが大切です。