ストーマが飛び出る原因は? 覚えておきたいよくあるトラブルと対処法

ストーマが飛び出る原因は?<br>よく見られるストーマ合併症の種類と対処法

ストーマを造設した直後は、オストメイトの方が新しい生活習慣に不安や疑問を抱えやすいタイミングです。
そのうえ、ストーマ造設後はさまざまな合併症やトラブルが起こる恐れがある点も見逃せません。合併症・トラブルの症状や対処方法などを知っておくことは、ストーマ造設後の不安を解消することにつながります。
ここでは、ストーマ合併症の種類や、よく見られる「ストーマが飛び出るトラブル」の原因、飛び出し以外の代表的な晩期合併症の例などをご紹介します。

ストーマ合併症の種類

ストーマ合併症の種類

ストーマ造設後は、さまざまな合併症が起こる恐れがあります。ストーマ合併症は、術後早い段階で発生する「早期合併症」と、退院後に発生する「晩期合併症」に分けられます。

早期合併症には壊死や粘膜皮膚接合部離開などがあり、手術に起因する症状が多い点が特徴です。ウロストミーの方は、腎不全や尿路結石などが起こることがあります。

一方で、晩期合併症には、狭窄や脱出、陥没などの種類があります。晩期合併症の多くは、疾患の進行や加齢、ストーマ管理の方法などが原因で発生するトラブルです。

代表的な早期合併症の種類と特徴

代表的な早期合併症の種類と特徴

ストーマの早期合併症は、壊死や粘膜皮膚接合部離開などの種類があります。それぞれの特徴は、以下のとおりです。

1. 壊死

血流障害によって、ストーマが壊死した状態です。ストーマが部分的または全体的に黒色っぽく変色し、硬さも見られます。壊死した部分は脱落するため、ストーマ狭窄などのトラブルにつながる恐れもあります。
ストーマの色や硬さの変化を確認し、血流障害が起きていないかを把握するようにしましょう。

2.粘膜皮膚接合部離開

ストーマと腹部の粘膜が癒合(傷が治って離れていた皮膚などが接着すること)せず、縫合不全を起こした状態です。ストーマの壊死が起こったり、腹壁の孔が大きかったりした時に発生します。

粘膜皮膚接合部離開が起こると、離開した部分に排泄物が入り込む恐れがあるため、洗浄を丁寧に行うことが大切です。皮膚保護剤で離開部を保護することも心がけましょう。

合併症でストーマが飛び出る原因は?

合併症でストーマが飛び出る原因は?

飛び出しが少ない、寝た状態になるとすぐストーマが元通りになる、腹痛などの症状がみられないといった時は、脱出していても緊急性は高くありません。医師の判断を仰ぐ必要はありますが、経過観察で問題ない可能性もあります。
ストーマを傷つけないように、面板の穴あけを少し大きめに行うことを心がけましょう。

ストーマ脱出以外に注意したい晩期合併症の例

ストーマ脱出以外に注意したい晩期合併症の例

退院後、日常生活を営む中で注意したい晩期合併症は、ストーマ脱出だけではありません。オストメイトの方に発生する可能性がある晩期合併症の例と、それぞれの対処法についてご紹介します。

1. 陥没ストーマ

ストーマが皮膚よりも低い位置に埋まってしまうのが陥没ストーマです。ストーマ(排泄口)に高さがないので、便や尿といった排泄物がストーマ装具の面板の下に潜り込みやすく、排泄物の漏れやストーマ周囲の皮膚トラブルにつながる恐れがあります。

凸面のストーマ装具を使用する、固定用ベルトを併用するなど、装具の見直しやアクセサリー類の使用といった対処を行うことが大切です。

2.ストーマ傍ヘルニア

ストーマ周囲の腹壁が膨らんでしまっている状態が、ストーマ傍ヘルニアです。ストーマ造設時にお腹にあけた孔が大きい、加齢や体重増加などで腹壁が脆くなったなど、さまざまな原因で発生します。

ストーマ傍ヘルニアになると、ストーマ周辺の腹壁が膨らんでしまうため、装具を安定して貼ることが難しくなります。排泄物の漏れによる皮膚トラブルを起こしやすいため注意が必要です。 適宜、ストーマ装具などの変更を行いましょう。ベルトでストーマ周囲を抑えてヘルニアを予防したり、装具の密着性を高めたりすることも大切です。

また、ストーマ傍ヘルニアによって痛みなどの症状が起こったり、排泄のコントロールが難しくなったりすることも考えられます。ストーマ傍ヘルニアが疑われる時は、早急に医師に相談してください。

3.ストーマ狭窄

何らかの理由でストーマの排泄口が狭くなってしまう合併症がストーマ狭窄です。排泄物の減少や痛みといったトラブルにつながります。
根菜類など、消化の悪い食べ物をよく噛まずに食べると、狭窄したストーマに詰まる恐れもあります。消化が悪い食材を食べる時は、調理方法を工夫することを心がけましょう。

軽度のストーマ狭窄の対処は、排泄物の性状を調整したり、飲み物を飲んだりすることが挙げられます。状態によっては、ストーマ口の拡張やストーマの再造設といった対処が必要です。
また、ストーマ狭窄は進行することもあります。定期的に医師の診察を受けることも大切です。

4.出血

ストーマ装具を交換する時などに、ストーマから出血が見られることもあります。ティッシュに少し血が付着する程度の出血なら、大きな問題はありません。
出血が止まらない、尿が赤くなっている、ストーマ袋に血がたまっているなどのトラブルが見られる時は、早急に医師に相談してください。

面板の穴あけが小さすぎて切り口がストーマに当たった、ベルトや衣類でストーマが擦れた、などが出血の主な原因です。ストーマ装具の交換時に出血がよく見られる方は、穴の大きさやベルトの位置などの再確認を行いましょう。

5.偽上皮腫性肥厚(PEH)

尿の漏れが原因で起こる合併症が偽上皮腫性肥厚(ぎじょうひしゅせいひこう)です。長期間尿に接触した皮膚がふやけ、角質層が増殖(肥厚)した状態を指します。患部に痛みを伴うこともあるため注意が必要です。

使用しているストーマ装具を見直したり、ストーマ装具交換時に皮膚を洗浄して清潔に保ったりする必要があります。

6.肉芽

ストーマの表面や腸管と皮膚がつながる部分に、赤色のしこりができるトラブルです。出血やストーマ装具の接着不良、排泄物の漏れなどにつながる恐れがあります。

便の付着が肉芽の主な原因です。ストーマケアの方法を見直し、周囲を清潔に保つことを心がけましょう。医療機関を受診し、医師の判断を仰ぐことも大切です。

日々の観察でストーマのトラブルを防ごう

日々の観察でストーマのトラブルを防ごう

ストーマを造設した直後だけでなく、日常生活に戻った後も、ストーマや周囲の皮膚の状態は変化することがあります。トラブルによっては、日常のケアが難しくなったり、生活に支障をきたしたりする恐れも捨てきれません。

ストーマの後期合併症は、ストーマ管理の方法を見直すことで予防できるケースもあります。適切なストーマケアの実施を心がけましょう。
ただし、ストーマケアを適切に行っていても、合併症・トラブルを完全に防ぐことは不可能です。常にストーマの状態を確認して、何らかのトラブルが見られた時はすぐに医師に相談してください。